サイバー攻撃も「AI対AI」の時代へ — 私たちのスマホやパソコンを守るために、今できること
2026年10月から11月にかけて、AIの世界でセキュリティに関する大きな発表が相次ぎました。
- Google:最上位モデル「Gemini 4 Carbon」を、まずサイバー防御の専門家に限定して公開(記事はこちら)
- OpenAI:セキュリティ専用モデル「GPT-6 Cyber」を、認証された利用者に提供。Firefoxの未知の脆弱性を81件発見(記事はこちら)
どちらも、ソフトウェアの「穴」を見つけて直す力がとても高いAIです。そして、どちらの会社も「まずは守る側へ」という慎重な公開方法をとっています。それはなぜなのでしょうか。
「守る力」は「攻める力」でもある
ソフトウェアの脆弱性(セキュリティの穴)を見つける力は、使い方によって正反対の意味を持ちます。
| 使う人 | 使い方 |
|---|---|
| 守る側 | 穴を見つけて、攻撃される前にふさぐ |
| 攻める側 | 穴を見つけて、そこから侵入する |
つまり、セキュリティに強いAIは、防御にも攻撃にも使える「諸刃の剣」なのです。だからこそ、GoogleもOpenAIも、まず信頼できる防御側の専門家に渡し、攻撃者より先に穴をふさいでもらおうとしています。
攻撃する側もAIを使い始めている
残念ながら、攻撃する側もAIを使い始めています。たとえば、次のような変化が起きています。
自然な日本語の詐欺メール
以前の詐欺メールは、不自然な日本語ですぐに気づけるものが多くありました。AIを使えば、本物そっくりの自然な文章が簡単に作れてしまいます。
声や顔のなりすまし
AIで家族や上司の声をまねた電話、顔をすり替えたビデオ通話など、ディープフェイクを使った詐欺も増えています。
攻撃の自動化
AIを使えば、攻撃の準備や実行を自動化し、より多くの相手を、より速く狙うことができてしまいます。
「AI対AI」の時代に、私たちができること
AIを使った攻撃と聞くと、とても難しい話に思えるかもしれません。でも、私たち一般の利用者を守る対策の多くは、昔から変わらない基本です。むしろ、基本の大切さが増しています。
1. アップデートはすぐに
GPT-6 CyberがFirefoxで見つけたような脆弱性は、アップデート(更新)によって修正されます。AIが穴を見つけても、私たちがアップデートしなければ、穴は開いたままです。
- スマホのOS
- パソコンのOS
- ブラウザ
- アプリ
は、更新の通知が来たら、できるだけ早く更新しましょう。自動更新をオンにしておくのがおすすめです。
2. パスワードを使い回さない
ひとつのサービスでパスワードが漏れると、同じパスワードを使っているほかのサービスにも侵入されるおそれがあります。
- サービスごとに違うパスワードを使う
- パスワード管理アプリを活用する
- 二段階認証(多要素認証)をオンにする
3. 「自然な文章」でも油断しない
AIのおかげで、詐欺メールの文章は自然になりました。文章の不自然さではなく、次の点で判断しましょう。
- 急がせる(「今すぐ」「24時間以内に」)
- お金や個人情報を求める
- リンクを押させようとする
- 送り主のメールアドレスが公式と違う
怪しいと思ったら、メールのリンクは押さずに、公式サイトやアプリから確認しましょう。
4. お金の話の電話は、一度切ってかけ直す
家族や上司を名乗る電話でお金の話が出たら、一度電話を切って、自分が知っている番号にかけ直して確認しましょう。家族で「合言葉」を決めておくのも効果的です。詳しくは「ディープフェイクにだまされないために」で紹介しています。
5. AIエージェントに渡す権限は最小限に
AIにメールやカレンダーを操作させる場合は、必要な権限だけを渡しましょう。悪意のあるWebページやメールに仕込まれた指示で、AIがだまされてしまう「プロンプトインジェクション」という攻撃もあります。
Gemini 4 Carbonは、この攻撃に対する強さを大きく改善したとしていますが、取り消せない操作は人が確認するという基本は変わりません。
企業や組織に求められること
会社や学校など、組織にとっても、AIの時代のセキュリティは大きな課題です。
- 社員のAIの使い方のルールを決める(会社が認めていないAIの利用=シャドーAIの把握も含めて。関連記事)
- 自社のシステムを定期的に点検する
- AIを使った新しい詐欺の手口を、社員に共有する
悲観しすぎなくていい理由
「AIで攻撃が強くなるなら、もう防げないのでは」と不安になるかもしれません。でも、悲観しすぎる必要はありません。
GoogleとOpenAIが「まず守る側へ」という方針をとったように、防御する側もAIで強くなっています。Firefoxで81件の脆弱性が見つかったということは、それだけ多くの穴が、攻撃される前にふさがれたということでもあります。
大切なのは、守る側のAIの成果を、私たち一人ひとりがアップデートなどの基本の対策で受け取ることです。
まとめ
- セキュリティに強いAIは、防御にも攻撃にも使える諸刃の剣
- だからこそ、GoogleもOpenAIも「まず守る側へ」提供している
- 攻撃する側もAIを使い、詐欺はより自然で巧妙になっている
- 私たちにできるのは、アップデート、パスワード管理、二段階認証、怪しい連絡を確かめるという基本の徹底
AIの時代のセキュリティは、AI同士の戦いのように見えて、最後は私たち一人ひとりの基本の行動が守りの要になります。今日、スマホのアップデートを確認することから始めてみませんか。