コラム

「非エンジニアがアプリを作る」時代、仕事はどう変わる? — これから価値が上がる3つの力

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JR九州で、プログラミングの経験がない社員が、生成AIの助けを借りて業務アプリを作ったというニュースがありました(ニュース記事はこちら)。AIがプログラムの9割以上を書き、2〜3カ月で、車両データを見える化するアプリと、勤務シフトを自動で作るアプリを完成させたといいます。

「プログラミングは専門家の仕事」という常識が、静かに変わりつつあります。この変化は、私たちの働き方にどんな影響を与えるのでしょうか。

何が起きているのか

これまで、会社で業務アプリが必要になったときは、次のような流れが一般的でした。

  1. 現場が「こんなアプリがほしい」と要望を出す
  2. 社内のIT部門や外部の会社に依頼する
  3. 要望を説明し、見積もりをもらう
  4. 何カ月もかけて開発してもらう
  5. できあがったものが、現場の想像と違うことも……

今、AIのおかげで、次のような流れが可能になりつつあります。

  1. 現場の担当者が、AIに「こんなアプリがほしい」と伝える
  2. AIがプログラムを書く
  3. 担当者が動かして確かめ、直してほしいところを伝える
  4. 数日〜数カ月で、現場が本当に必要なアプリができる

「作りたい人」と「作る人」が同じになった。これが、いちばん大きな変化です。

エンジニアの仕事はなくなるの?

「誰でもアプリを作れるなら、エンジニアはいらなくなるのでは」と思うかもしれません。でも、そう単純ではありません。

現場の人が作れるのは「小さな道具」

非エンジニアがAIで作れるのは、多くの場合、チームや部署で使う小さなツールです。会社全体の基幹システムや、たくさんのお客さまが使うサービス、お金や個人情報を扱うシステムには、引き続き専門家の力が欠かせません。

エンジニアの役割が変わる

エンジニアの仕事は、なくなるというより、役割が変わっていくと考えられます。

これまでこれから
要望を聞いて、一から作る現場の人が作ったものをチェックし、安全にする
小さなツールもすべて担当大きく重要なシステムに集中
プログラムを書くのが中心設計、セキュリティ、品質の管理が中心に
—現場の人がAIで作るための環境やルールを整える

これから価値が上がる3つの力

非エンジニアにとっても、エンジニアにとっても、これから価値が上がっていくのは次の3つの力です。

1. 「何を作るべきか」を見極める力

AIは「作って」と言えば何でも作ってくれます。でも、「そもそも何を作れば、現場の問題が解決するのか」は、AIは教えてくれません。

JR九州の事例でアプリを作ったのは、運輸部の担当者でした。現場の困りごとを一番よく知っている人だからこそ、本当に必要なアプリを作れたのです。

2. 「言葉で伝える」力

AIにアプリを作ってもらうには、やりたいことを順序立てて、具体的に説明する必要があります。

  • 誰が使うのか
  • 何を入力して、何が出てくればいいのか
  • どんなときにエラーになるべきか

これは、AIに限らず、人に仕事を頼むときにも大切な力です。AIの時代には、この「言語化する力」の価値がさらに高まります。

3. 「確かめる」力

AIが書いたプログラムが、本当に正しく動くのか。間違った結果を出していないか。それを確かめるのは人です。

  • いろいろなパターンで試してみる
  • 手計算や既存の方法と結果を比べる
  • 「これでいいのか?」と疑う

この検証する力がなければ、AIが作ったものを安心して使うことはできません。

新しく生まれる課題

非エンジニアがアプリを作れるようになると、新しい課題も生まれます。

管理されていないアプリが増える

社員がそれぞれ自由にアプリを作ると、会社が把握していないアプリが増えていきます。これは、会社が認めていないAIを社員が使う「シャドーAI」と似た問題です(関連記事)。

作った人がいなくなったら?

アプリを作った人が異動や退職をしたら、誰が直すのか。引き継ぎのルールが必要です。

セキュリティ

個人情報やお金を扱うアプリを、専門家のチェックなしに作ってしまうと、情報漏えいなどのリスクがあります。

こうした課題に対応するためにも、JR九州のように、ルールづくりと活用をセットで進めることが大切です。

私たちはどう備えればいい?

自分の仕事の「困りごと」を見つける

まずは、自分の仕事の中で「毎回面倒だな」「こんな道具があればいいのに」と感じることを探してみましょう。それが、AIで解決できる最初のテーマになります。

小さく試してみる

いきなり本格的なアプリを作る必要はありません。AIに簡単な計算ツールを作ってもらうところから始めてみましょう。作り方は「プログラミング未経験でもできる!AIで業務アプリを作る入門」で紹介しています。

会社のルールを確認する

作ったものを仕事で使う前に、会社のルールやIT担当者の考えを確認しましょう。

まとめ

  • AIのおかげで、「作りたい人」と「作る人」が同じになりつつある
  • エンジニアの仕事はなくなるのではなく、役割が変わる
  • これから価値が上がるのは、「何を作るか見極める力」「言葉で伝える力」「確かめる力」
  • 管理、引き継ぎ、セキュリティなど、新しい課題へのルールづくりも必要

プログラミングができるかどうかより、現場の困りごとをよく知り、それを言葉にできるかどうか。AIの時代に求められる力は、意外と身近なところにあるのかもしれません。